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G空間EXPO
●講演「市民生活から見た土地の境界」〜県境の引かれ方から考える〜
講演の内容資料
  • 秋田県と青森県の県境にある十和田湖に関する境界線の事例
  • 県境はいつ決まったのか
  • 旧国界を決めた基準は何か
  • 旧国界、県境を動かした政治判断
  • 市民生活から見た境界の修正
  • 日本人口の過去とこれから
  • これからの不動産価値の決まり方について

以上について、地図を参照しながら事例を交えての講演が進められた。

秋田県と青森県の県境にある十和田湖に関する境界線の事例では、もともと境界線がなかったところにある「もの」がきっかけで問題が発生した。現在では、十和田湖の特産品になっている「ヒメマス」がきっかけで明治35年境界線に係わる騒動が起こりました。日本政策投資銀行参事役の藻谷氏は、講演の中で「経済が発生するとそこに境界問題が発生する。その結果、どこまでが支配の及ぶ範囲かが大きな問題になる」と述べられた。

十和田湖の事例では、「ヒメマス」を通じて青森、秋田の人々が一緒になって苦労され、十和田湖の特産品として観光資源にまで育て上げた結果、十和田湖の自然環境を守ることの重要性が共通認識として芽生えたことによって、問題が良い方向で問題が解決された事例として紹介された。

県境がいつ決まったのか、また、決まるまでの経緯、基準、旧国界を決めたことで生じる問題、解決に向けた境界の修正等についての講演では、もともと、県境は、大和朝廷が大まかに決めた「旧国界」を基本に定められ、太閤検地では、それらがより明確に定められた。旧国界を定めるに当たっては、「水系」で分けることが基本であったが、生活圏が明確に水系で分かれていない場合も多く、後々に大きな問題に発展した。

明治政府が行った近代日本建設のための政治判断で行われた県境の変更については、当時の徴税システム、人々の思いなどが複雑に関係し今でも様々な問題をはらんでいる。しかし、当時は、新生日本創設の時期なので多くの矛盾を抱えながら進められていた。

県境を変えた事例として住民の山岳信仰が挙げられた。新潟県、福島県、山形県にまたがる飯豊山がそれである。登山口は福島県にあるが、山頂の神社等は、福島の人間が管理していることから、わずか幅10メートルの細長い県境がある。これは、他県が山形県に張り出している事例で、逆に、山形県が張り出している事例として鳥海山の周辺が挙げられた。

日本のこれからについては、これまでは、人口増加をベースとして経済が語られてきたが、今後は、人口が減少していく経済を考える必要があり、土地については、利用者が減少すれば、希少価値が減少することが想定される(土地余り現象の発生)。

ものが余ることによって価格形成のプロセスに変化が生じ、今後の藻谷氏の予想としては、土地自体に希少性がなければ、建物から切り離された「地価」は消滅し、適切にメンテナンスされ、運用されてお金を稼ぐ建物の底地に値段がつくことになるだろうとのこと。

需要と供給の一例として「吉祥寺」が挙げられた。ここが、「住みたい街ランキング」で上位に評価される理由は、建物の容積率を制限して供給過剰にならないようにコントロールしているからです。

【photo】藻谷浩介 【photo】藻谷浩介 【photo】藻谷浩介
藻谷浩介氏:日本政策投資銀行参事役

今回の講演で藻谷氏からのメッセージとして、県境界といった大きな事例であったが、土地家屋調査士の業務に大変参考になった。また、今後、人口が減少していく中で都市開発では利益が生じなくなることから、私たちが地籍を明確にすることで土地の価値を向上させ、その土地の有効利用を可能にすることが重要であると受け取りました。

●パネルディスカッション「暮らしの安全と登記制度」〜高度情報化社会における不動産登記制度のあり方〜

グローバルな経済社会活動という国際環境の中、成熟した高度情報化が進む一方で、少子高齢化、地域経済の疲弊など解決すべき課題を抱える現代の日本において、地籍制度の課題と今後について探る。

出席者
パネリスト
秦 愼也氏(法務省民事局民事第二課 地図企画官)
安藤暁史氏(国土交通省土地・水資源局 課長補佐)
和田陽一氏(東京都北区まちづくり部まちづくり推進課主査)
碓井照子氏(奈良大学文学部地理学科教授)
海野敦郎氏(神奈川県土地家屋調査士会会長)
コーディネーター
藤木政和氏(日本土地家屋調査士会連合会常任理事)
第1部「財産の安全の基礎としての公示制度」
秦 氏

日本の地籍の公示制度は、明治時代の地券制度に始まり、台帳制度と登記簿制度の一元化など幾多の改革を経て、対抗要件としての権利の登記と、その前提となる「表示に関する登記」、その情報と現地を繋ぐ「地図」を備えた、現在の不動産登記法による制度に整備がなされてきた。

藤木氏

日本においては「地籍」は明確な法律の形はしておらず、不動産登記法や地籍調査の法律で運用されている。公示制度部分と対抗要件の混同や、特に都市部における地図や図面の整備が今後の課題である。

第2部「豊かな生活を支える地図」〜公図の再生を通して〜
安藤氏

国土調査法の改正により一定要件を備える民間法人に事業の一括委託をし、土地家屋調査士など専門家の力を活用する制度を導入。国土調査促進特別措置法では十箇年計画に記載する国の基本調査の範囲を拡大。第6次国土調査事業十箇年計画では実施面積等の目標のほかに、進捗率の目標や未着手休止市町村の解消を掲げた。

秦 氏

不動産登記法第14条地図のほとんどが国調地籍図だが、都市部の地図が少ない現状が緊急の課題。現在「民活と各省庁連携による平成地籍整備の推進」の下、国調地域と近接して、地図混地域は法務局で地図を作成するという連携を図り、実績を上げつつある。また、都市再生街区基本調査で全国のDID地区に設置された街区基準点を、今後の地積測量図作成や地図整備に活用する。

和田氏

北区は災害に強いまちづくりの中で土地の明確化に取組み、都市型地籍調査に着手。国調法19条5項指定も活用し、事業開始前に課題・問題を見出し積極的に解決していく方針だ。

碓井氏

都市再生街区基本調査は都市部の再生と国調の推進が目的だったが、社会のインフラ整備の流れ、国土交通省と法務省の連携など様々な要素が融合して、街区基準点の整備と地積測量図への利活用に連携。地籍調査の効率的進行のため、官民境界の正確な確定による基盤整備を為し、地積測量図を「嵌めこむ」という考えが主流となってきた。

海野氏

地積測量図の「嵌めこむ」方法と法務局作成地図作りと地籍調査を組み合わせていけば、地籍整備はさらに進捗する。

安藤氏

国も地積測量図の「嵌めこみ」ができるように官民境界情報の整備を進めていく。民活による地籍整備では、専門家の力や19条5項指定などで地籍調査以外の測量成果を活用していく。

第3部「デジタル社会に向けた不動産権利の明確化」
碓井氏

現代社会は国土も権利もIT化していくが、日本の資本主義を根底で支える登記制度も例外ではない。IT化には一定のルールが必要で、地籍に関してはLADM(土地管理領域モデル)。人、権利、義務、規制などの権利事象を対象にした空間情報の標準化の作業で、2011年にISOスタンダードとなる予定で検討中だ。また人の特定は公示制度を効率的に運用するため必要で、これには住所が不可欠だ。位置の特定には座標の識別子と地名や郵便番号などの地理識別子の2種類がISO/TC211で決められ、地名が一番重要である。2010年4月からAddressing=住所表記に関する標準化を始めた。

GISをベースにITを使って登記制度と地籍制度の統合モデルを作っていく、表示登記のIT化の試みは、法務省、国土交通省が運用しているが、実務レベルでは土地家屋調査士が行っており、その社会的使命は大変重要である。

© Japan Federation of Land and House Investigators' Association