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60周年記念事業

第7回国際地籍シンポジウム開催

国際地籍シンポジウムは、地籍学及び実務の進歩普及を図る目的で、日本(日本土地家屋調査士会連合会)・韓国(大韓地籍公社)・台湾(中華民国地籍測量学会)を核として設立した「国際地籍学会」が主催するもので、平成10年秋の台湾での第1回開催以降、開催地を2年毎の持ち回りで実施されております。
2010年はその開催年に当たったことから、会員に3つのテーマ(①地籍(土地)法と土地測量の推進、②空間情報と土地測量の利用、③調査と地図作成技術の革新)の論文募集を行い、応募のあった論文の選考を行い、同シンポジウムでは、連合会長の基調報告に続き、5名の入選論文の発表を行いました。
●講演「市民生活から見た土地の境界」〜県境の引かれ方から考える〜
日 時:2010年(平成22年)11月9日〜11日
場 所:「グランドホテル(圓山大飯店)」(台湾 台北市中山北路)
●基調報告
「日本における地籍整備の新しい取り組み」  松岡直武(日本土地家屋調査士会連合会長)
1  はじめに
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本報告の趣旨

日本においては数年前から地籍情報の整備の重要性が司法界、政府機関、地方自治体、国会議員、地方議員、民間の土地所有者等の間で急速に認識されることとなった。その背景には国民の権利意識の高まり、土地利用の多様化と高度化、経済環境の低迷を打破する一策として土地取引の流動化促進の流れ等があげられるが、本年改定期を迎えた国土調査事業十箇年計画の策定年度に当たることもその要因の一つである。

本報告では日本の地籍の整備に関する課題、特に地籍調査の進捗が思わしくないことを打破する施策として実施されることになった地籍整備の新しい取り組みとそれを可能にした関連法令の改正についてその意義、概要、展望の一端を報告する。

2  地籍整備の現状と課題

登記に必要な地図の整備の現状

明治初期の地租改正に伴う土地調査に淵源を持ち、日本の登記所に備え付けられている不動産登記の対象となる各筆の位置・形状等を明らかにした地図(登記所備付地図)は、その精度面において現在の社会環境では活用することが困難なものであることから、登記制度を所管する法務省ではこれまで40数年にわたり各土地の再調査を伴う地図作りを実施してきたがその範囲はごく小さなものであるにすぎない。それ以外の施策による登記所備付地図整備の事業として、1951 年に施行された国土調査法に基づき国土調査の一環として進められている地籍調査の成果を登記所備付地図として活用している。この事業は、法制定以来60 年を迎えた今日においても、要調査面積の49%が完了したに過ぎず、最も整備が必要とされる都市部においてはわずか21%が完了したにすぎない。以上により、日本の登記所備付地図の約半数は未だ120 年前に調整された精度の低い地図に頼っており、この整備促進が急がれている。

3  第6 次国土調査事業十箇年計画の策定とその骨子

近年に至って不動産登記法を所管する法務省と国土調査法を所管する国土交通省等が連携して地図作りを促進する政策(省庁連携の地籍整備事業)が実施され、地籍調査を推進することにより登記所備付地図の整備を図ろうという試みが官民一体となって進められている。その基盤となるのがこれまで5 次にわたって実施されてきた国土調査事業十箇年計画である。

本年はこの十箇年計画の改定期に当たることから数年前から政府等において新しい施策の骨子を検討してきた。今回の国土調査法の改正は新しい十箇年計画の策定と、その推進を図ることにより日本の地籍整備が飛躍的に進むものと期待されている。

4  国土調査法及び国土調査促進特別措置法の改正

改正法の骨子とその概要

  1. 2010 年を初年度とする第6 次国土調査事業十箇年計画を策定すること
  2. 十箇年計画に記載する基本調査の範囲を拡大すること
    これまで国の直轄事業は基準点設置を主としたものであったが、今回の改正で、市町村が地籍調査を実施しやすくするため、都市部では地籍調査の前提となる官民の境界情報の整備に必要な基礎的な情報を国が整備する「官民境界基本調査」を、山村部では境界情報を簡易に広範囲で保全する「山村境界基本調査」を新たに国が直轄事業として実施することとした。またこれらの基本調査を十箇年計画に位置づけ、計画的・戦略的に取り組むことができるよう、所要の改正をした。
  3. 国土調査の実施の委託対象を民間法人に拡大すること
    地籍調査を実施する市町村の体制面(人員の確保)の負担軽減を図るため、調査・測量を行い、その結果を地図及び簿冊に作成するという、一連の地籍調査の工程を一括して民間法人に委託し、受託した民間法人が実施主体となって、責任を以て調査を実施することが可能となった。
  4. その他
    国土調査法の罰則の規定を改正したこと
5  今後の予定

国土調査法及び国土調査促進特別措置法の改正法案は本年3月の国会において可決成立した。今後は、実施に必要な政令及び省令の改正をするべく、国土交通省では日本土地家屋調査士会連合会を含む関連機関・団体から意見を聴取している。地籍調査に必要な予算の内、国家予算については既に国会で承認されている。ただし、国が直轄で行う事業部分を除き地籍調査を実施する自治体においても負担金が必要となるため地方自治体側の予算の確保が課題である。

なお、今回の改正では、民間の開発事業等の成果を国土調査の成果と同等なものとして取り扱うことを促進することにより地籍調査の実施区域の拡大を図る措置(民間事業者の行う調査・測量費用の一部を国が補する制度)が採用されている。(国土調査法19 条5 項の指定申請の推進方策)

今回の講演で藻谷氏からのメッセージとして、県境界といった大きな事例であったが、土地家屋調査士の業務に大変参考になった。また、今後、人口が減少していく中で都市開発では利益が生じなくなることから、私たちが地籍を明確にすることで土地の価値を向上させ、その土地の有効利用を可能にすることが重要であると受け取りました。

●基調報告
「法務省がおこなう地図作成作業」  小林昭雄(日本土地家屋調査士会連合会常任理事)
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1.法務省が行っている地図作成作業の状況として、法務省と土地家屋調査士が連携して取り組んでいる地図混乱地域の解消を目的とする登記所備付地図作成作業があります。一定の地域で広範囲にわたり、登記所の公図と現地に対応する位置及び形状等が著しく相違している地域を地図混乱地域といい、全国に1,000km2あるといわれています。昨年度、法務省が策定した「改・新8 か年計画」により、今年度は、1 年目作業が16km2、2 年目作業が15km2の地域で行われております。法務省ではこの地図作成業務を土地家屋調査士に一部委託しており、法務省と土地家屋調査士が連携して、市民に安全な地図の提供を行っています。  2.次に、筆界特定制度という行政型の裁判外紛争解決制度があり、法務省が実施しています。筆界特定制度は、公法上の境界である筆界の現地における位置を筆界特定登記官が特定する制度であり、筆界をめぐる紛争の予防及び早期の解決を図るものとして、これまでに一定数の筆界特定を行ってきたところであり、制度創設の効果が上がっているといえます。  3.この制度と並行して、民間型の裁判外紛争解決制度、土地家屋調査士会ADR(Alternative DisputeResolution)があります。土地家屋調査士会が設置した民間紛争解決手続機関であり、弁護士会との協働又は協力により運営されています。

筆界特定制度と土地家屋調査士会ADR の連携を進めており、境界問題で困ったときには両機関をうまく活用してお互いの境界を確認し合うとともに、地籍の整備にも繋がっています。

「北海道における筆界の創設と地図」  中原章博(札幌土地家屋調査士会理事)
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土地の境界を明らかにすることは、その土地の変遷を知ることでもある。我が国における地籍の変遷は、多くの場合「公図」にその根拠を求めてきた。しかし、公図作成の経緯と測量の技術的な理由から現地の境界が容易に復元されるわけではないとされている。そのことは境界をめぐる新たな対立を生む原因ともなる。境界が明らかでないことを理由とする場合と同じく、長らく「境界確定訴訟」として紛争の解決を裁判所の法廷に求めてきた。

2007 年4 月施行の「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR 基本法)に先立ち、土地家屋調査士会では2002 年10 月「あいち境界問題相談センター」を皮切りに、現在ほぼ全国の土地家屋調査士会で境界ADR センターが設立された。そして、2007 年12 月、大阪土地家屋調査士会が同法律第5条の認証を受けた。これは、従来からの調停制度・裁判制度等の公権力による境界紛争の解決手段に加え、1999 年12 月に司法制度改革審議会が公表した方針を実現した、日本における境界紛争の新しい解決手段が創設されたわけである。

地図の地域による違いを踏まえ、「公図」から不動産登記法に基づく「地積測量図」を紹介する。特に、北海道における筆界の形成と地図を歴史的考察にする。そこでは、筆界の創設過程と作成された地図を精査することで、地図の持つ現地復元性を確認することができる。それは、地図を前提として、境界における認識を関係する人の間で一致させることが未然に境界紛争が予防されることになり、境界紛争の際の有力な解決手段として活用されてきた。

今後、我々土地家屋調査士が取り扱う地図情報は高度化され、高度化された地図情報は広く共有化される。それは、地理空間情報における基盤地図情報とも共有され、新たな地図情報として将来の境界紛争の予防につながる。また、境界紛争が発生したときに解決へ向けた当事者間での合意形成への最も説得力のあるところと成り得ると考えられる。各国での地図・境界に関する地籍情報のあり方を検討することで、将来にわたり境界をめぐる争いを予防する手段として活用することが、これからの土地家屋調査士に求められている。

「地籍情報調査にかかるオントロジー」  藤井十章(日本土地家屋調査士会研究所研究員)
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オントロジーとは、共通語彙(概念)を提供する体系化された辞書のようなものである。日頃培われているバックグラウンドにある暗黙的な情報を明示することにより、作業者はもとより、世界の地籍に関する相互理解を助ける。すなわち地籍オントロジーは、専門家が業務に研究・精通している利点を生かし、構築していくことで、社会の「知」としてより情報グローバルに共有できる基盤となる。

地籍オントロジーはUMLなどの汎用性の高い概念図で表す。また、土地家屋調査士の作業規定である「調査・測量実施要領」に基づいた測量計算技法や地積の表示(丸め処理)などの不動産登記事務手続に至る計算ルールを関数定義して整理することを併せ持つことが重要である。

今般は、専門家によるオントロジー構築の必要性を通して、情報の共有に関する可能性を研究するとともに、社会全体の効率的かつ将来にわたって情報価値を判断できる環境を整えることの重要性を発表した。

「土地家屋調査士制度におけるCPD の運用〜社会にとって必要な専門資格者としてあり続けるために〜」
  加賀谷朋彦(日本土地家屋調査士会連合会常任理事)
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現今の社会環境及び司法制度を取り巻く環境が急速に変化する中、「法律関連専門職種」、「測量技術者」としての土地家屋調査士の責任は非常に重大であり、プロフェッショナルとして社会の要請に応えていかなければならない。そのためには、業務遂行に供する専門知識と技術の更なる維持向上を図ることが不可欠である。つまり、われわれ土地家屋調査士は、専門資格者として継続的な能力開発を進めていかなければならない。そこで、日本土地家屋調査士会連合会は、日常的に自己研鑽に励み、努力している会員の取組みを共通の基準で適正に評価し、その内容を公開することで、土地家屋調査士の社会的信用を高め、高い業務資質を国民に提供し社会に貢献することを目的とした、「土地家屋調査士専門職能継続学習」(「土地家屋調査士CPD」)制度を制定し、平成21 年4 月1 日より運用を開始した。ここに、土地家屋調査士CPD 制度の制定に至る経緯及び現在の状況について紹介し、本制度における今後の課題及び将来の展望について考察する。

「日本における地図再整備事業の現状と課題〜測量技術の進化と地図情報の深化〜」
  上田忠勝(滋賀県土地家屋調査士会理事)
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いわゆる“公図”と称される、日本の基礎地図は、整備後100 年余の歴史を持つ。その間、数次の制度改革により、高度化・精緻化への取り組み…すなわち“地図の再整備”が継続的に図られてきた。

しかし、日々向上する測量・作図技術の進化速度、社会価値の変化速度と実際の地図作業の進捗速度のギャップは、各年代・各地域の成果における、技術的・価値的な差違を生むこととなり、地域によっては、既に精緻化されたはずの地図について、更なる再整備が必要であるという不合理な現象を生じさせている。

この現象は、今後の地図整備事業において、その期間が長ければ長いほど顕在化することとなる。全国土の整備まで、あと数十年から数百年を要するといわれている現状では、早急な制度的対処が必要であるように思われる。単に測量の精度を追いかけるだけでなく、現地情報と地図情報の融合技術…いわゆる地図情報そのものの質を高めるための制度改革が必要なのではないか。

本研究では、全国各地で行われている地図再整備の実務データを基に、現行制度の問題点を抽出し、新たな時代における地図情報の価値、生産技術、更新・管理技術及びそれに伴う組織、作業者の体系を検討する。

●ブース展示
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松柏庁会場において展示が行われ、台湾から内政部国土測絵センター、台北市政府地政所、雄市政府地政所、台南県政府、他有限公司等8か所、日本、韓国を加えて10か所のブースが出展した。

日調連からは、英文ポスターを掲示し、パンフレット配布を行った。さらに、淺野制度対策本部員を中心に上田氏、藤井氏がパソコンも使用しながら来場者に説明を行い、台湾、韓国の展示も含めて多くの関係者が訪れた。

© Japan Federation of Land and House Investigators' Association