獨協大学教授  小栁春一郎

獨協大学教授 小柳春一郎

はじめに

 「司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律」(令和元年法律第29号)による改正後の土地家屋調査士法(新)第1条は、見出しを、従来の「目的」から「土地家屋調査士の使命」に改め、
土地家屋調査士について、「不動産の表示に関する登記及び土地の筆界(…)を明らかにする業務の専門家」として、「不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命」とすると定めた。土地家屋調査士は、表示登記関連業務だけでなく、筆界の特定、ADR手続における代理や登記所備付地図の作成等の分野など活躍の場が拡大し、空き家問題・所有者不明土地問題への対応、自然災害における復興支援等に、専門家として参画してきた。これが法文に結実した1
 以下では、土地家屋調査士法制定以来の土地家屋調査士の役割(→1)を検討した後、最近の土地法制における土地家屋調査士の位置を論じ(→2)、今回の土地家屋調査士法改正の意義について検討する。

1 土地家屋調査士の使命

 土地家屋調査士の役割について、昭和25(1950)年の制度創設時代は、土地台帳・家屋台帳の正確性の確保を中心としていた。その後、昭和35(1960)年の台帳と登記簿の一元化で表示登記の正確性の確保が業務とされ、また、昭和54(1979)年土地家屋調査士法改正は、国民の権利明確化を最終的な目的とした。その上で、平成17(2005)年不動産登記法改正・土地家屋調査士法改正は、土地家屋調査士の業務の対象である筆界に明確な定義を与え、更に、筆界特定手続代理権を土地家屋調査士に付与して、土地家屋調査士の役割を紛争解決にまで拡大した。

(1)昭和25年土地家屋調査士法制定当時:台帳の正確性の確保
 昭和25年に土地家屋調査士法が制定された時に、既に、登記制度の基礎としての正確な不動産情報の整備が土地家屋調査士の重要課題であった。制定当初の土地家屋調査士法1条は、「この法律は、不動産登記の基礎である土地台帳及び家屋台帳の登録事項の正確さを確保するため、土地家屋調査士の制度を定め、その業務の適正を図ることを目的とする。」と規定していた。
 第8回国会衆議院法務委員会議事録の土地家屋調査士法案の提案理由(土地家屋調査士に関する小委員長 田嶋好文)は、「このたび地方税法及び土地台帳法等の各一部改正によりまして、土地台帳、家屋台帳が税務署から登記所である法務局または地方法務局に移管されることになりました。土地台帳、家屋台帳に記載される事項は、不動産登記の目的たる諸権利の基礎である事実関係を示すものとして、その正確性が大いに要求されるのであります。従来におきましても、土地、家屋の調査、測量をいたしておりました者は、各税務署の嘱託としてこれを行い、税務署の人件費、旅費等の費用を節し、またその專門的技術を生かして土地台帳、家屋台帳への申告、図面の作成にあたつていたのでありましたが、何らその資格に関して法的根拠がなく、いかがわしい者もこの調査、測量を行つていたのであります。この際土地台帳及び家屋台帳の登録につき必要な土地または家屋に関する調査、測量及び申告手続が的確に行われるかいなかは、国民の権益並びに国家経済にも、きわめて重大な影響を及ぼすこととなるため、本法によりまして、土地家屋調査士の制度を新たに法制化いたすものであります。」と指摘している2
 この点に関して、昭和を代表する民法学者である我妻榮は、登記簿の他に土地台帳及び家屋台帳の制度があること、これらは、土地又は家屋の状況を明確にすることを目的として、一定の事項の登録をするものであって、当該土地・家屋の登記を掌る登記所が管掌することを指摘した後、「両者とも、初めは、課税の目的のために徴税官庁によって管掌されたので、土地・家屋の実情を示すには充分でなかった。新法(昭和22年土地台帳法、家屋台帳法のこと……小柳注)によって、その所管を登記所に移し、専ら土地又は家屋の状況を明確にすることを目的として作られるようになって、非常に改善された。」と論じていた3。台帳と登記の二元制度について、我妻は、不動産が、近代法の下において、一面、敏活な取引を要求したこと、他面、課税対象として重視され、それに関する登録制度を要求したことを理由として、「両制度は、多少、その中心点を異にしている」と述べていた。我妻は、同時に、両制度の関係を一層簡易化する必要を指摘していた。

(2)昭和35年不動産登記法改正:登記簿における不動産の表示の正確さ
 次に重要なのは、昭和35年の不動産登記法改正による台帳と登記簿の一元化である。有泉亨による我妻『物権法』改訂は、同改正について、土地台帳・家屋台帳と土地登記簿・建物登記簿との記載内容の一致を促進するという見地から肯定的に評価し、従来の欠陥が、かなり改善されたと指摘し、「表題部に記載すべき事項を整備し、これを表示の登記として台帳と同じ機能(市町村の土地課税台帳・家屋課税台帳の原本としての機能を含めて)を営ませると同時に権利の登記との連携をはかることにした」と論じている4。こうして表示登記の専門家としての土地家屋調査士の位置づけが明確になった。これに伴い、土地家屋調査士法の第1条は、「この法律は、登記薄における不動産の表示の正確さを確保するため、土地家屋調査士の制度を定め、その業務の適正を図ることを目的とする。」と改められた。

(3)昭和54年土地家屋調査士法改正:表示登記の円滑な実施と国民の権利明確化
 その後、重要なのは、昭和54年法律66号「土地家屋調査士法の一部を改正する法律」による第1条全文改正である。これは、「この法律は、土地家屋調査士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、不動産の表示に関する登記手続の円滑な実施に資し、もつて不動産に係る国民の権利の明確化に寄与することを目的とする」と規定した。これに関して、参議院法務委員会の昭和54年6月5日の審議で、香川保一法務省民事局長は、「本来は登記制度というものによりまして、国民の不動産に対する権利関係を明確にするということでございますが、何と申しましても、所有権の問題一つ取り上げましても、境界紛争があるというふうなことではこれは権利の保全にはほど遠いわけでございまして、さような意味の、物自体を明確化するという意味で、調査士の業務はまさにさような面での重要性を持っておる」と論じていた。

(4)平成17年不動産登記法改正:筆界の意義付け
 平成17年不動産登記法改正は、筆界特定手続を設けたことが重要である。この改正は、筆界について、「表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。」と定義を与え(123条1号)、更に、筆界特定に関連して筆界特定調査委員としての土地家屋調査士の関与を明確化した(128条1項2号)。
 これに伴い、土地家屋調査士法も改正され、その業務に、筆界特定手続における代理業務、民間紛争解決手続における代理業務(弁護士と共同)が新たに設けられた。これは、土地家屋調査士の活動範囲を拡大するものであり、その後の、災害、空き家問題対応、所有者不明土地問題への対応での土地家屋調査士の活躍につながっていく。

2 最近の土地法制の展開と土地家屋調査士

 土地は、所有者にとって重要な財産であり、また、その利用等のあり方は周囲にも大きな影響を与えるものであることから、日本国憲法成立後、土地法制は、さまざまの観点から、問題になってきた。その中心は、住宅不足、地価高騰、まちづくり、景観、土地投機への対応等があった。これに対して、最近の土地法制として重要なのは、災害の多発と人口減少問題への対応である。土地基本法改正が、土地所有者の管理の責務を明らかにしたことも注目に値する。

(1)自然災害の多発と地籍調査の不十分
 近時の日本は、しばしば大規模自然災害に見舞われている。地震として、平成7(1995)年の阪神・淡路大震災や平成23(2011)年の東日本大震災があるが、更に、気候変動の影響によるのか、洪水・がけ崩れ等が頻発している。災害の後に必要となるのが、復興であるが、大規模災害では、被災前の土地状況の調査・再現がしばしば困難である。これでは、個人の建物の建設が困難になるのみならず、公共団体による土地の買収、土地の区画整理等が進捗しない。
 東日本大震災後の土地家屋調査士による相談例では、「土地の境界が良くわからない。土地が基礎も境もなくなった。境界の復元作業などは自治体などで補助してもらえないのか。隣地所有者とは境界について合意しておらず、今後取壊して瓦礫を撤去した際に境界がわからなくなる。(国土調査の時に筆界未定地になっているとのこと。)。建物が全壊、基礎だけ残っている。隣も同じだが、市の基礎撤去受け付けが 2 月末までになっていて、撤去してから隣との境界が分からなくなって揉めるようなことにはなりたくない。」などの多数の質問が寄せられた。被災地における津波等による瓦礫、家屋の倒壊、土地境界杭の流失、地盤沈下、地殻変動など国民の大切な不動産が明確に示せない状況において、土地家屋調査士は重要な貢献を行い、復興計画に協力した5
 不動産登記法第14条第1項の規定によって、登記所に備え付けることとされている地図は、精度の高い調査・測量の成果に基づいて作成され、「一筆又は二筆以上の土地ごとに作成し、各土地の区画を明確にし、地番を表示する」ものであり、現地復元性を有するとされている。ところが、地図作成のための国土調査法に基づく地籍調査は、昭和26年に開始されたが、令和元(2019)年度末時点における進捗率は、52%であり、都市部(DID:人口集中地区)及び山村部(林地)において、地籍調査が進捗していない。特に、大都市圏では、東京23%、大阪10%、愛知13%のような低率にとどまっている。
 すでに、平成12年度開始の第5次国土調査事業十箇年計画において、一筆地調査における外部技術者の活用が導入され6、国土調査の実質的担い手として、公共嘱託登記土地家屋調査士協会による受託等がなされている。今後は、現地の慣習に習熟し、一筆地調査に経験豊富な土地家屋調査士の一層の活躍が望まれる。
 令和2年の国土調査法改正は、地籍調査において、新たな調査手法及び地域特性に応じた効率的調査手法導入を促進することにした。所有者などに対する報告徴収権限を調査実施主体に付与し(新23条の5)、所有者探索のために固定資産税台帳などの利用を可能とし(新31条の2)、また、不動産登記法改正として、地方公共団体が筆界特定を申請することができるものとした(新不動産登記法131条2項)。更に、地籍調査作業規程準則改正により、所有者不明の場合において、筆界案の公告により筆界を位置づけることも可能になっている(新30条)。

(2)人口減少問題
 最近の日本社会を悩ます人口減少問題は、不動産においては、「所有者不明土地問題」として注目を集めている。日本における所有者不明土地問題とは、「土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、又は判明しても連絡がつかない土地(以下「所有者不明土地」という。)が生じ、その土地の利用等が阻害されるなどの問題」とされる7。その対策として、「相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」として、不動産登記情報の更新を図る方策とりわけ、「相続登記の申請の義務化」が提唱されている。所有者不明土地の発生を抑制する方策として、「土地所有権の放棄」及び「遺産分割の促進」(具体的には、遺産分割の期間制限等)がある。また、「所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み」として、共有制度の見直し、とりわけ、共有物の管理や共有物の変更・処分の規律の明確化や共有者の同意取得方法に関する規律の整備、更には、共有者中の一部の者による取得時効の円滑化も検討された8
 最近の法制として重要なのは、「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」(令和元年法律第15号)である。この法律は、所有者不明土地問題への対策の一環として、不動産登記簿の表題部所有者欄の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が正常に登記されていない「表題部所有者不明土地」について、その登記及び管理の適正化を図るために必要となる措置を講ずることにより、その権利関係の明確化及びその適正な利用を促進しようとする9
 具体的には、表題部所有者不明土地の登記の適正化を図るための措置として、登記官に所有者の探索のために必要となる調査権限を付与し、所有者等探索委員制度を創設するほか、所有者の探索の結果を登記に反映させるための不動産登記法の特例を設けた。また、所有者探索後も、所有者特定ができなかった表題部所有者不明土地について、適正な管理を図るための措置として、裁判所の選任した管理者による管理を可能とする制度を設けた。
 この法律において「表題部所有者不明土地」とは、所有権の登記がない一筆の土地のうち、表題部に所有者の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていないものである。登記官による調査探索のために、所有者等探索委員による所有者等の探索が行われるが、そこに、登記申請手続を職務とし、公的に能力が担保されている、土地家屋調査士と司法書士の協力が要請されている10

(3)土地基本法改正
 令和2(2020)年の土地基本法改正は、土地所有者についての管理の責務規定の新設が注目される。改正後の第6条は、(土地所有者等の責務)として、「土地所有者等は、第二条から前条までに定める土地についての基本理念(以下「土地についての基本理念」という。)にのっとり、土地の利用及び管理並びに取引を行う責務を有する。2 土地の所有者は、前項の責務を遂行するに当たっては、その所有する土地に関する登記手続その他の権利関係の明確化のための措置及び当該土地の所有権の境界の明確化のための措置を適切に講ずるように努めなければならない。3 土地所有者等は、国又 は地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力しなければならない。」と定めた。
 土地基本法の見直しのため2019年12月に発表された国土審議会土地政策分科会企画部会「中間とりまとめ~適正な土地の「管理」の確保に向けて~」は、「一般的には、周辺の土地や近隣住民等に対して、生活環境の悪化、災害のおそれなど保安上の危険、円滑な利用の阻害等の悪影響を与えないために必要となる保全行為(物理的管理)とともに、災害発生時の緊急時の対応等も念頭に、自らが所有者であること及びその所在を登記により公示するほか、土地の境界の明確化に努め、これに協力するといった行為(法的管理)を求めることが必要である。」と論じていた11
 管理不全としては、ゴミ屋敷、シロアリ空き家などの外部への悪影響(外部不経済)が比較的明確な物理的管理不全のみならず、土地所有権の登記による公示、境界などの法的管理不全も重視されている。改正土地基本法は、土地所有者に所有者不明土地問題が生じないようにする責務を課したことになる。実際には、土地所有者自らが、登記手続なり、境界の明確化を誤りなく行うことは困難である。素人である土地所有者は、土地という重要な財産権に関する正確な法的・技術的知識を持つことが不可能に近いし、また、近隣との交渉についてのノウハウも経験も有していない。
 土地の管理不全対策として、重要になるのは、専門家の活動である。土地家屋調査士は、筆界の専門家であるが、多くの場合、筆界は、土地所有権界と重なり合っている。しかも、令和元年改正後の土地家屋調査士法は、土地家屋調査士の使命を「不動産に関する権利の明確化に寄与し、もつて国民生活の安定と向上に資すること」としている。土地家屋調査士が、土地所有者の境界の明確化に貢献することがますます必要になっている。

(4)民法・不動産登記法改正案
 所有者不明土地問題への対応として、法務省は、法制審議会において、民法・不動産登記法改正を準備し、内閣は、2021年3月5日に「民法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。境界関連としては、境界測量等のための隣地使用権及び境界協議義務が問題になった。
 隣地使用として、現行の民法第209条は、境界やその付近における障壁・建物の築造・修繕のための隣地使用請求権を規定しているところ、新第209条案は、「境界標の調査又は境界を確定するための測量」の目的について「必要な範囲内で隣地を使用することができる」権利を認めた(1項二号、ただし、隣地使用の日時、場所、方法は、隣地所有者及び現在の隣地使用者のために「損害が最も少ないものを選ばなければならない」3項)。2019年12月発表の中間試案の説明は12、「所有権の境界と筆界とは一致することも多いが、例えば、一筆の土地の一部につき売買がされたり、取得時効が成立したりした場合には、一致しないことがある。ここでいう境界を確定するための測量は、最終的に所有権の境界を確定するための測量を指している。」と述べている13。実際には、所有権の境界と筆界が一致している場合が多いのであるから、筆界の専門家である土地家屋調査士の業務に有益な改正構想と考えられる。
 これに対して、境界協議義務については、法制審における審議に先行した「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究報告書~所有者不明土地問題の解決に向けて」(2019年2月)では、「土地の境界の確定のための協議」として、「土地の境界(所有権の境界)が明らかでない場合には、土地の所有者は、隣地所有者(隣地所有者が共有者である場合も含む。)に対して、土地の境界確定のための協議を求めることができるものとすることについては、その効果や必要性に十分に留意しつつ、引き続き検討すべきである。」との提案があった14。これは、国有財産の管理に関して、境界が明らかでない場合における隣地所有者との間の境界確定のための協議等について、規律が設けられていることを参考にしたものである(国有財産法第31条の3第1項)。
 しかし、境界協議義務は、その後の法制審審議において具体化の動きはなく、その導入は見送られた。境界協議義務が履行されないとしても、境界を強制的に決定することができるような性質のものではないため、協議を求めることができるとする規律を置く意義に疑問が提示されていたことが関連する。これは一面では残念なことではある。なお、筆者は、境界確定協議請求権は必ずしも必要ないという立場である。その理由は、境界協議の濫用的拒否の場合、信義則に反する態様による人格権的利益の侵害を以て不法行為とする救済があり得ること、また、国有財産法の境界協議義務規定は、隣接地所有者としては、協議に応じない場合には不利益があるものの、協議に形式的であれ応ずれば、その後境界不同意が可能という程度だからである15

おわりに

 土地家屋調査士法の昭和54年改正は、土地家屋調査士の職務について、表示登記に直接結びつける形での不動産の権利関係の明確化を期待したが、令和元年改正は、土地家屋調査士が表示登記と筆界の専門家であることを明記し、登記を中心に据えながらも、関連する境界ADR等にも視野を入れている。土地家屋調査士の本来業務が、表示登記関連業務であることは変わらない。しかし、災害、空き家問題などへの対応、所有者不明土地問題への対応は、筆界の専門家としての土地家屋調査士の意義を再認識させた。今後も、人口減少問題、災害関連の制度改正がつづくであろうから、土地家屋調査士は、アンテナを広く張り、業務にあたることが必要になる。
 改正土地基本法は、土地所有者に所有者不明土地問題が生じないようにする責務を課したが、実際には、土地所有者責務の履行には、専門家の役割が重要になる。これを具体化する立法が期待される。
 最後に、不動産登記制度の目的が単に「取引の安全と円滑」(不動産登記法第1条)で良いかは、残された問題である16。新井克美は、「登記簿と台帳を統合して一元化し、表示に関する登記制度が創設された後(昭和35年後)においては、土地登記簿は、結果的に、領土情報ないし国土管理情報としての意義を有することになった」と指摘し、「一筆地ごとに、その物理的情報及び所有者情報を登記記録に記録することは、領土情報の把握として、国家の責務ということができよう」と論じている。不動産登記制度は、不動産「取引の安全と円滑に資する」だけでなく、国の土地情報の基礎であることを考えれば、この点について、明記をする改正が必要と考えられる。そして、不動産登記法自体に、土地家屋調査士の役割を正面から位置づけることが必要になるであろう。

※注釈はPDFでご確認ください。