青森県土地家屋調査士会

【目的】

各自治体は、これまで航空写真により森林の現況を把握していると思いますが、決して安価ではなく、それゆえ森林の一部分の状況を毎年知りたくともなかなか難しい状況にあります。
そこで、短時間かつ廉価で広範囲を空撮できる「ドローン」を使って森林を空撮し、その高解像度な画像情報から「未登記建物」、「現況が地目と異なる土地」のみならず、「占有状況」についても把握し、地図との整合性を含め検証することで、土地家屋調査士が様々な場面で寄与できることを示したい。また各自治体に交付されている森林環境譲与税の使途の提案も併せて示したい。

【経緯】

国土の7割を占める「森林」は、地球温暖化の防止、災害防止による国土保全、水源の涵養など、私たちに様々な恩恵を与えています。
しかし近年頻発する災害をはじめ、山林所有者の経営意欲の低下、相続登記未了地、都市部住民相続による山林放棄地(所有地の場所が不明)、境界未確定地の増加、境界確定にかかる費用・時間の負担増などが大きな課題となっており、早急な森林整備等が必要とされています。
そのため、この森林整備等に必要な財源として、国民から徴収する「森林環境税」が、また、その財源を森林整備等に活用するために各自治体に按分さ森林環境譲与税」が創設されました。各自治体が森林環境譲与税をどのように使っていくかは各々の地域性、特性に依るでしょうが、まずは森林の現況把握が必須です。 境界、占有状態等をも把握できれば、森林財産保全や維持管理、山林放棄地の解消、所有者不明土地問題の解決に繋がるからです。そこで試験的に青森県六戸町の森林を対象に土地家屋調査士がドローン撮影し、そのデータから見える様々な課題について同町とともに解決策を探 っていくことを計画しました。

【目指すもの】

六戸町と青森県土地家屋調査士会が、お互いに寄贈するデータの活用方法を検討することを通して、贈後の防災対策や所有者不明土地問題等の解決に土地家屋調査士が寄与できることをアピールします。また、この取り組みが、今後六戸町の森林環境譲与税の使途への一助となることを期待します。

【事業経過と結果】

現在観測はすべて完了し、データ編集作業中です。
編集作業の完了予定は、1月始め頃を予定しています。
その後、六戸町よりメディア(新聞社等)に声掛けしていただき、贈呈式を1月19日六戸町役場で開催する予定です。
贈呈するデータは、飛行機による空中写真に比べてかなり鮮明なものであるため、通常の活用方法の他に、いろいろな活用方法が考えられます。そこで、六戸町と青森県土地家屋調査士会とで、贈呈後に勉強会を開催し、アイディアを出し合い活用する計画となっています。勉強会では、当会より森林環境譲与税の活用についても提案する予定です。

【登記制度について創造されたもの】

今回のプロジェクトで、自治体に森林環境譲与税の使途として森林のドローンによる空撮データに法務局の法第14条地図を重ねたデータの作成を提案し、実際にそのデータを作成し寄贈しました。
そのデータ(高解像度)を土地家屋調査士の視点で分析した結果、①現況建物と登記されている建物との相違 ②未登記建物現況地目と登記されている地目の相違 ③現況の境界線と法第14条地図上の境界煽の相違等が、容易に確認できるばかりでなく、森林が持つ全体的な課題も把握することができることがわかりました。このことは、自治体がとるべき戦略的対策・政策に土地家屋調査士が関与できる可能性を見いだし、現行の登記制度にとらわれない土地家屋調査士制度にとっての新たな創造の一つであると考えました。

【創造されたものを活かすには】

森林整備は、昨今多発する災害の防止の観点から非常に重要視されています。そこで土地家屋調査士が持つ「地図を読む能力」を、森林に対して広域的に、効率的に活用できれば、土地家屋調査士として登記制度だけではなく、新たな社会貢献ができるものと考えます。
そこで、具体的に少しでも土地家屋調査士が関与できるよう、データを寄贈した自治体の職員と活用方法についての勉強会を開催、 また、青森県土地家屋調査士会独自で作成した活用方法を提言いたしました。