福井県土地家屋調査士会
福井県土地家屋調査士会 境界鑑定委員長 西田 和生
【現状】
近年の測量機械やデジタル解析技術などの発達により、様々な方法で空中写真やリモートセンシングデータを作成して2次元や3次元で活用されている。 そして、非常に高度で詳細に解析された資料が作成され、境界を判断する資料の一つとされている。今後の土地家屋調査士も、これらの技術やデータ等を活用し、皆が同一水準の技術を備えて運用するべきと考える。しかし、最新技術の導入は高額な費用や人件費などの莫大な経費を要する事からして非常に困難であり、実際には一部の資力がある者または企業等が運用しているというのが現状である。また、データ計測から最終の活用結果に至るまでに膨大な時間を費やす必要があるため、コストパフォーマンスの悪さや対応の遅さが最大の弱点ともいえる。
一方、山間部においては、高齢化により境界を把握している人々が急激に減少しており、後継者の問題は逼迫している。既に現地における土地の所有地や境界が不明となっているために土地の管理や取引、そして公共事業の障害となっており、これらの解消は喫緊の課題となっている。 今後は、これらの問題についても土地家屋調査士が積極的に関与すべきであり、近い将来は、当事者でなく第三者が資料や地物等の解析によって土地の所在や筆界を判断する場面が拡大していくことが想定される。 実際に、現在「リモートセンシング技術を用いた山村部の地籍調査」、「効率的手法導入推進基本調査」(旧名称:山村境界基本調査)、「森林整備地域活動支援交付金制度 2. 森林境界の明確化に対する支援」などの事業が官公庁により実施され、詳細なリモートセンシングデータ等の利活用により資料や地物等の解析によって境界の判断(筆界案作成)が為されている。
これらは、まさに土地家屋調査士にとっての専門分野であり、技術の習得は避けられない時代にな っている。
【目的】
リモートセンシングデータを作成する技術の習得は必要であるが、その前に、リモートセンシングデータを活用する技術を習得する事が最も優先すべきと考える。全ての土地家屋調査士が空中写真やリモ ートセンシングデータを2次元や3次元で活用する事ができ、簡易で概略的な資料を無料(もしくはできる限り安価で)かつ短時間で作成できる手法を習得する事でニーズに応え、皆が同一水準の技術を備えて運用できる事を目指したい。
一見、簡易で概略的な資料を作成できる手法とも思えるが、今後の最新技術に対応する為の基礎となり、スタートラインになり得ると考える。この手法では筆界の位置を正確に特定するまでの精度には至らないが、これにより机上で事前に調査・推測・ 検討・計画などの作業の一つとして考察する事が可能となり、現場作業の効率化や、依頼者や関係者に対して事前に調整や協議をする事も可能となる。事務所に訪問された依頼者等に対しても、デ ィスプレイモニタを使用し、概ねの境界の位置などを確認する事もできる為、推測や検討において、即時に対応する事が可能である。 また、内容にもよるが、事務所のディスプレイモニタのみで、ある程度の依頼者の悩みや疑問を解消する事ができる場合もある。これにより、比較的簡便に土地家屋調査士としての知識力・技能力・考察力・判断力・ 迅速な対応力などの専門性の高さをアピールする事ができると考える。ひいては、土地の境界問題を病気に例えるとすれば、土地家屋調査士は町医者、各事務所は診療所の様な存在として地域に定着することが期待される。
【キーワード】
・ 最新技術の波、コストパフォーマンスと現実性、 皆が同一水準の技術を備える。
・ GISによる管理
・ ジオリファレンス(重ね図)、簡易オルソ、通常写真の活用、画像処理技術
・ 事前調査、事前推測、概略計画、国民にとって町医者や診療所的な存在
【事業内容】
① 福井県農林水産部森づくり課に対し、土地家屋調査士法第1条改正に伴い、土地家屋調査士が公益的資格者である旨を説明し、同課が保有する1mメッシュの点群データ(DEM又はDTM)から作成された福井県内全域の立体画像表現図(位置情報付き画像データ)を当会が一括して提供を受けた。
今後は、当会の会員が山間部における土地の所有地や境界などの問題解消に対し、各自が画像データを活用し、迅速に対応できる手法を身につけておく。
福井県農林水産部森づくり課により様々な画像デ ータ等が追加作成され次第、今後も継続的に提供が為されるよう、使用実績を定期的に報告して信頼関係を築くよう努める。
② 当会 境界鑑定委員会にて、技能向上のため実習形式の研修会を実施する。
[ リモートセンシングデータ等を活用した事前調査の手法について ]
【登記制度について創造されたもの】
A I 技術の進歩や、コロナ禍が拍車をかけたWEBによる手続きの浸透により、我々士業のあり方が変貌していくのは間違いない。よって、これからの社会に必要とされる土地家屋調査士であり続けるためには、既存の表面的な技術から一歩踏み込んで、最新技術の応用など付加価値を盛り込んでいく必要があると考える。しかしながら、最新技術の導入は莫大な経費を要する事から非常に困難である。また、コストパフォーマンスの悪さや対応の遅さが最大の弱点ともいえる。これらにより、最新技術の機器を用いた技術の利用は、全ての土地家屋調査士が利用する事は不可能であり、現実的ではない。
リモートセンシングデータを作成する技術の習得の前に、 活用する技術を習得する事が最も優先すべきと考える。 全ての土地家屋調査士が空中写真やリモートセンシングデータを活用する事ができ、簡易で概略的な資料を作成できる手法を習得する事でニーズに応え、皆が同一水準の技術を備えて運用できる事を目指した。これにより、土地家屋調査士としての専門性の高さをアピールする事ができると考える。
【創造されたものを活かすには】
全ての土地家屋調査士が利用できない技術を提供しても現実的に意味がなく、全ての土地家屋調査士が現実的に利用できる技術を研究し、この技術の活用が土地家屋調査士としての最低限の技術水準となるよう研修をおこなっていくべきである。今回の技術に限らず、様々な新技術を学び、応用し、全会員に等 しく提供していくことで、土地家屋調査士の最低限の技術水準を引き上げ、全体でレベルアップしていくことを目指していく。
研修風景
講師モニタを確認しながら、実践演習を行う