徳島土地家屋調査士会

【目的】

不動産登記を自然災害から身を守る1つの情報源として活用する。
建物登記の情報を防災に活用し役立たせるためのモデルケースとして、建物図面の中に建物敷地の標高情報を記載する「津波防災建物図面」を作成した。建物敷地それぞれに敷地標高を表示することにより、役所の保管する津波ハザードマップの情報と登記情報との間に関連性を持たせた。そうする事で直面する津波に対して建物所有者が当事者意識を持って自分の建物に対する浸水被害を予見する事を促す。また、自分に降りかかる浸水状況を具体的に数字でイメージする事で迅速な行動につながる事を期待する。津波に対する万全の準備をすることによって、被災を最小限にとどめる効果を登記の情報から得られることを目的とする。

【経緯】

徳島では南海トラフ巨大地震による津波被害が甚大な被害になると考えられている。
そのため、役所には南海トラフ巨大地震による浸水ハザードマップなど浸水被害をシュミレーションしたようなものも多く備えられており、登記情報との関連性を持たせて何か出来ないかを考えた。例えば津波が発生した場合、テレビ等の報道では浸水映像や河川氾濫状況が放映されているがそれがあたかもテレビの中の別世界での出来事のように感じとれる。大変なことが起こっているという事実は把握はするものの自分とは関係のない人ごとのような感覚に陥ってしまう。他人事と考えることで避難行動や被災に対する準備が遅れ被害が拡大している状況をよく目にする。そこで、実際、自分の住む建物の建物図面にその敷地の標高を入れることにより、自分の土地の浸水被害予測や避難の必要性をより身近なものとしてとらえられるのではと考えた。

【目指すもの】

津波発生時に「今回の津波では標高1mまでの浸水エリアは○町と△町、標高3mまでの浸水エリアは○町と□町」のようなアナウンスがあれば、その津波発生の規模と自分の地域でのどの程度の浸水被害が予想される津波なのかが分かって早期の冷静な避難行動がとれ避難スピードの向上につながる登記情報を目指す。

【事業経過と結果】

阿南市役所庁舎の建物表題登記を寄附事業として行った。
建物図面に敷地標高を入れた「津波防災建物図面」を作成し、阿南市役所が持つ「南海トラフ巨大地震の津波ハザードマップ」とのヒモづけを試みた。

【登記制度について創造されたもの】

不動産登記(建物表題登記)に標高を記載した建物図面成果を作成し、市が持つ津波浸水ハザードマップにより津波浸水時の浸水水位と市役所庁舎建物敷地の標高とをヒモづけし津波被害をより身近なものとして捉える事により、登記情報からの防災意識を向上させて減災につながるような登記モデルケースを創造した。

【創造されたものを活かすには】

徳島県は地域的に南海トラフ巨大地震に対する防災意識が高く、県内の多くの市町村に津波ハザードマップ的なものがあり、自分の土地の登記図面に標高を入れるだけでも、色んな市町村所有の防災図面とヒモづけができ、土地柄、自然災害(津波防災)から身を守る危険予知意識の高揚を図ることができる。
又、山間部においては土砂災害等地滑り区域等の明示した成果と登記図面とのヒモづけを計るなど、登記情報に標高などのちょっとした情報を加えるだけで大きな防災成果を得られるモデルケースも出来うると考える。
具体的な目標としては法務局備付の建物図面に標高などの市町村が持つ図面とヒモづけできる情報を反映した建物図面が出来ること(今回は成果として市役所に提出)。
そのような建物図面が出来た際には、更なる防災意識の向上として標高を明示したプレート(境界プレートの様な物)等を敷地内に設置する等の方法も防災の観点から有効であると考える。