愛媛土地家屋調査士会

【目的】

愛媛県民の貴重な財産である象徴的な建物やその敷地を適正かつ安全に地位承継できるよう、行政と連携し防災・減災の観点から、現行の登記制度に囚われず、多目的に利用できる情報(位置情報・3Dスキャンデータ等)を付加するなどして、住民のみなさまと登記制度の未来を考える契機とすることを目的とする。

【経緯】

契機となったのは、2019年4月、ローマ・カトリック教会の大聖堂である「ノートルダム大聖堂」が大規模な火災により、大きな被害に見舞われたが、2010年から大聖堂の外部及び内部をレーザースキャナでスキャニングするプロジェクトを展開していたため、この高精度な3Dスキャンデータが再建に重要な役割を果たす可能性が大きいとの報道に触れたことによる。また、我が国においても沖縄県の首里城が火災に遭い、再建のプロジェクトが動きはじめているし、近年は気象環境の変化による想定外な災害も多発している。以上のように今回のプロジェクトは、事故や自然災害時のみならず、大規模改修工事時にも県民のみなさまに対し、大いに役立つものと考えている。

【目指すもの】

愛媛県庁本館を3Dレーザースキャナにより測量し、当該測量で得られた3Dデータ(点群データ)やそのデータを利用して作成されるVR映像は、防災・減災対策、被災後の復旧工事等へ利活用する。

【事業経過と結果】

令和2年12月12日(土)、13日(日)に愛媛県庁の調査・測量を実施予定だったが、新型コロナウイルス感染症が全国で拡大している状況を受け、愛媛県から要請があり、作業が延期になった。今後、感染者の発生が落ち着き、状況が整い次第、再開する予定。

【登記制度について創造されたもの】

当会では、日調連の登記創造プロジェクトの趣旨に則り、愛媛県庁本館を 3Dレーザースキャナーによる測量を実施し、VR映像を防災・減災対策、被災後の復旧工事等への利活用することを計画していたが、コロナウイルス感染症等の影響により断念せざるを得なくなった。
なお、このほか土地家屋調査士制度70周年の事業として、「70周年の記念境界標」を作成し、全会員に配布するほか、土地の登記に関係する市町の長または各課の代表に面会して境界標の重要性を説明し、市民への啓発また公共事業における境界標の設置について呼びかけをした。当会においては、昭和57年に桐のマークの境界標(アルミプレート)を全国に先駆けて発案し、境界標設置を促進してきた実績があり、その後の地図作成業務などの境界確認においても、当時からの境界標が現存しており境界の明示に役立っていることを表している。
また、土地家屋調査士は、筆界の専門家として土地境界の管理についての重要性を日々感じていることであり、たとえ法務局において登記がされていても、土地の管理が行き渡らず、境界が現地において不明であった場合、または、現地と合致していなければ、不動産の円滑な取引に支障を及ぼすことは言を俟たない。
昭和57年の桐のマークの境界標を創造したということを超えることは難しいですが、全点に境界標を設置するという当時のプロジェクトの精神に則り、今後も継続してこれについて取り組んでいくことを改めて確認する1年となった。

【創造されたものを活かすには】

地図、地積測量図、境界確認書、道路台帳などにおいて、基本三角点等の座標値によって記録することの担保として、境界(地点)を現地で明確にしておくことまた管理するためには境界標の設置が不可欠であることを啓発していくことに役立てる。